プロトコール部会

ハチ刺傷事故

夏から秋にかけて新聞、テレビ等でよく耳にする事故があります。
誰もが知っているのに毎年多数の死傷者が発生する事故。そうですハチ刺傷事故です。
なぜ事故は起きるのでしょう?また事故に遭った際にはどうすればいいのでしょう?
事故に遭わないために、もしもの時のために考えてみましょう。

1.ハチの種類と特徴


ハチ刺症の被害の多くはスズメバチとアシナガバチによるものです。
特にスズメバチは攻撃性が高く、強力な毒を持つため毎年多くの死者が出るなど注意が必要です。


スズメバチ

ハチの中でも特に攻撃性が高く強力な毒を持ちます。1匹の女王蜂を中心に大きなコミュニティーを形成し巣を守る本能が強いため、近づいたり刺激を与えると威嚇しながら仲間を呼び集団で襲ってきます。
スズメバチの持つフェロモンは毒液の中に含まれており1度刺されるとさらに多くのハチが攻撃を仕掛けてきます。

 


キイロスズメバチ

スズメバチ類の中では個体数が最も多くなり、刺傷被害が1番多くなるハチです。大きさは約2cm〜3cmで攻撃性も高い。


アシナガバチ

性質はスズメバチに比べるとおとなしく、巣を刺激しなければ襲われる危険は少なく、事故は子どもが巣を刺激して起こるケースと、洗濯物に紛れ込んでいることに気付かず発生するケースがほとんどです。
毒はスズメバチより弱いがショックを起こすこともあるので注意が必要です。

2.ハチの活動時期


働き蜂は7月から羽化を始め、9月から10月にかけて集団の個体数は最大になります。
この時期ハチは繁殖期を迎え、巣全体が非常に緊張した状態にあるため人が不用意に近づくと外敵とみなし執拗に攻撃を仕掛けてきます。 
刺傷の受診のピークは9月にみられ、8月から10月に発生する被害が全体の9割を占めるなど事故が集中します。

3.ハチ刺されによる症状


ハチの毒には強力な溶血作用、その他生理作用があります。ただし数カ所刺されたくらいでは死に至ることはありません。その症状は局所の腫れからアナフィラキシーまで極めて多彩です。
ハチ毒にアレルギーの無い人は、ハチに刺されても強い痛みとかゆみ、発赤、腫れといった局所症状のたいした症状でなくても次の刺傷でショックを起こす場合がありますので念のため受診しましょう。
ハチ毒アレルギーの人は極めて強い反応が起こり嘔吐や全身のじんま疹、血圧低下や呼吸困難といった全身症状があらわれ死に至るケースもみられます。

アナフィラキシーとは?

過去にハチに刺された経験があると、体内でハチ毒に対する抗体(免疫)が作られます。まれに2度目に刺されたとき、ハチの毒に対して免疫が過剰に反応する人がおり、この反応がアレルギーとなり、嘔吐やじんま疹、血圧低下などの全身症状を引き起こすことをアナフィラキシーショックと呼びます。

4.ハチに刺されてしまったら


ハチに刺されてしまったら、毒針が残っていたなら直ちに取り除きましょう。ハチ毒の吸引器があれば吸引しましょう。ハチ毒は水溶性ですので水で洗い流し、患部を冷やし抗ヒスタミン薬などの薬を塗りましょう。また医師から内服薬の指示がある場合は、服用してください。

アレルギーがなければ数カ所刺されたくらいでは問題ありません。しかし早い段階で(数分〜30分程)で全身症状が現れた場合は、できるだけ早く病院を受診してください。

「 ハチ刺されにはアンモニアが効く 」 というような話がありますがこれは誤りです。 ハチ毒はほぼ中性です、それに対しアンモニア水はアルカリ性のため、中和することはできないのです。

5.ハチによる被害を防ぐために


ハチは住宅街から山林までいたる所に生息しています。
実際その被害は、市街地での通勤通学から山間部への遠足までと、人とハチが接触する機会は多くありますハチにであったら慌てず静かにその場を離れましょう。

 

6.ハチ刺傷による被害


ハチ刺傷における死者数はヘビ咬傷を超え、毎年20名から30名にのぼります。また、ハチ類の相談や駆除の依頼は、10年前に比べ約9倍増加しています。
これは環境の変化によるハチの生息域の拡大、アウトドアスポーツの増加で屋外での活動の増加、天敵となる動物、昆虫が都市部からいなくなったことなどが原因だと考えられます。