プロトコール部会

胸痛

胸痛とは、胸のあたりに感じる痛みのことをいいます。
胸部には心臓、肺といった生命を維持するための重要な臓器が集まっています。そのため胸部の痛みには、生命を脅かすような重大な病気が隠れている可能性が高いといえます。また、胸部だけでなく背部の痛みも同様です。  
胸部に痛みを感じたり、居合わせた人が胸部の痛みを訴えたりした場合は、ためらわずに119番に通報し救急車を呼んでください。

1 . 急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)


心臓に血液を送っている動脈(冠状動脈)が血のかたまり等によって詰まってしまい、心臓に血液が行かなくなり壊死した状態のことで、処置が遅れると死に至る大変危険な病気です。
症状のポイント
・20分以上続く ・冷や汗、皮膚の蒼白を伴う ・胸の中央が締め付けられる様に痛い など

2. 狭心症(きょうしんしょう)


一過性(時間がたつと元に戻る)の心筋虚血による胸痛を狭心症と言います。運動時に胸痛が出現するものや、安静時にも胸痛が発生するものなど、誘因、経過、発生機序などで複数の種類が分類されています。急性心筋梗塞に移行する場合があるので早期に医療機関にかかりましょう。
症状のポイント 
・運動時の痛み(安静時にも起こりえます) ・時間の経過により痛みがおさまることがある

3. 急性大動脈解離(きゅうせいだいどうみゃくかいり)


心臓から延びて腹部にまで至る親指程の太さがある血管を大動脈といいます。動脈は3層構造になっており、その内側の膜が裂けてしまう病気を大動脈解離といいます。裂けたところが破裂すると大量に出血し、死に至る病気です。
症状のポイント 
・突然の胸部、背部の痛み
・痛みが移動する場合がある

4. 肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)


静脈などでできた血のかたまり(血栓)が肺動脈に詰まってしまう病気。 肺動脈は心臓と肺をつなぐ血管で、この動脈が詰まると血液が酸素を取り入れることができなくなり、呼吸困難と共に胸の痛みが現れることがあります。エコノミークラス症候群として有名で死に至るケースも少なくありません。 症状のポイント・呼吸困難に伴う胸痛、せき、動悸がある。        
・足のむくみ、足の痛みがあることも ・長時間座っていた

5. 気胸(ききょう)


肺に穴が開いてしまう病気です。せき、嘔吐、スポーツ、外傷が誘因となります。軽度の場合は胸痛や呼吸困難といった症状が現われないこともありますが、重症化すると漏れた空気により肺や心臓が圧迫され、重度の呼吸困難、血圧の低下により死に至る恐ろしい疾患です。
症状のポイント
・胸痛に伴う呼吸困難(無い場合も) ・重篤な場合はチアノーゼ(唇や指先が紫色になる)、胸の動きの悪さ(ふくらみにくい)

胸痛を伴う病気は生死に関わる重大なものが多いので、早めに救急車を呼んだ方がよいでしょう。